話をM子さんに戻そう。

会社を辞めてからも、パートさんからたまに連絡があり、色々職場の様子を話してくれた。


M子さんは、ご主人の浮気が発覚し、離婚してほしいと言われたらしいとか。M子さんはパートさん全員に毎日自分のお喋りを聞かせていた。私にしていたように。

プライベートな話を何でも話してくるので、聞かされる人はどう反応すればよいのか戸惑っていたらしい。
                                          


その後しばらくして、M子さんはご主人から「浮気相手が事故で亡くなった。離婚はしないことにする。」と言われたという。

そんなドラマみたいな事あるのかなあ。凄いなあ、と思いつつ私はM子さんの話を疑っていた。


仮に真実としたら、可哀想な話だが、M子さんが心から悩んでいる姿が想像できなかった。

M子さんも夫と似たタイプな気がした。


仮に離婚しても、ケロッとして彼女ならすぐに次の相手を見つけるイメージがあった。


辞めた会社の話題を聞いても、遠い昔の事の様でどうでも良かった。


その後、何年経ったか、M子さんの名前も忘れるほど、当時の事は記憶から薄れて行き、そのパートさん達とも次第に疎遠になっていた。
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そんな頃、近所に大きなショッピングセンターができた。

その店の食品売り場で買い物をした時だ。隣のレジの人を見た時、どこかで見た顔だなあと思った。


M子さんだった。名前を思い出せない。名札を見ようとしたが、遠くて見えない。


M子さんにこんな所で会うとはと、しかも忘れた頃に。驚いた。

M子さんの当時の家はその店からは遠く離れている。我が家からも遠かった。

だから同じ市内でも、そう簡単にばったり会う事は無いと思っていた。営業の仕事でそれこそ車であちこち回り、色んな人に会っても、M子さんには出くわさなかった。

今更声をかけるなんてしない。向こうは私の事は忘れているだろう。

そう思い、それ以降もそこで買い物をしてもM子さんの事はスルーしていた。

それからまたしばらく経って、私はPTAの役員をする事になった。

同じ役員のお母さんと雑談をしていた時、その人が自分の職場の話題をし始めた。

レジの仕事で、女性ばかりだから色々人間関係が大変だという話で盛り上がった。あるパートさんでこんな人がいるのよと話題になったその人がM子さんの事だったのだ。

名前を聞くと、聞いたことのない名前だった。M子さんの苗字は忘れたが、聞けば思い出すはず。しかしその名前は全く聞いた事のない名前だった。
M子さんは結局離婚したのだそう。この時の職場でも自分の身の上話を誰にでも話している様だった。

それで、色んな男性と付き合い、今は同棲中だという。

そのお母さんが言うには「あんなお化粧もしない皺だらけのおばさんにそうやってすぐに彼氏ができるのが不思議、性格も変わってるし、本当の話なのだろうか、と皆疑っているのよ」

なるほど。相変わらずなのね。名前が変わっているから、離婚は本当の話だろう。

結局、子どもさんはできず、独身のままだという事がわかった。

頑張って働いて、元気でいるのね。それだけでもうM子さんの事はいいわ。と思いながら、どこで誰が見ているかわからないものだなあ。怖いなあ。気を付けなくてはと思った。

それから後、M子さんはそのお店を辞めていた。今度こそ、もう会う事は無いと願いたい。



   

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