(亜紀のお兄さんの)ケイさんとお嫁さんのミキさんのお話に続きがある。

ミキさんの逃亡騒ぎがあってから、亜紀のお母さんは体調を崩し入院した。

お嫁さんに嫌われた事のショックがきっかけだった。

別居しているし、祝福されて結婚式もあげて、まだ新婚なのにそこまで旦那さんの親を嫌うミキさんが理解できなかった。私の知っている亜紀のお母さんはそんな意地悪な人に見えないし、静かな優しい人なのにと不思議だった。

亜紀は「ミキさんはお嬢様育ちだから、やっぱり経済的にも辛抱してるし、うちみたいな裕福ではない家の庶民的な会話にもついていけてないのかも。方言で話す我が家に違和感あるみたいで。いつも表情が暗いし。」と愚痴っていた。

お母さんはその後退院されて、元気になられたと聞いた。

それからまた月日が過ぎ、ケイさんの話題は全く聞かれなくなったし私も聞かなかった。

ある日、学校に亜紀が物を置き忘れていて、一番近くに住む私がアパートに夜届けに行った。

ちょうど亜紀は電話中だった。

電話をきった後、私を部屋の中に入れてから、ゆっくり話し出した。

「今の電話はお父さんからなの。実はお母さんがまた具合悪くなって、救急車で運ばれたりして、今日手術したんだけど、無事終わったと今電話がきたところ。」

そんな事とは全く知らず、驚いた。
「実家に帰らなくても大丈夫そうだから、いつも通りに過ごす」と言っていた。

「実はね、お兄ちゃんの問題で、また色々あって、お母さんはそれでずっと体調崩しがちなのよ。」
と、またケイさんの話題になった。あれからまた何かがあったようだ。


「お母さんは、どうにかミキさんの気持ちを聞きたくて、あれからまたお兄ちゃんちに行ったみたいなの。前もって連絡すると断られるから、いきなり夜に訪ねていった。そしたらね、赤ちゃんが生まれていたのよ。夫婦で赤ちゃんの身体を洗っていたの。慣れない手つきで二人がかりで。」

「ミキさんは自分の親にも私たちにも子どもの事は秘密にしていたの。内緒で産んで、産後の世話はお兄ちゃんがしていたみたいだけど、二人共初めての事だから大変だったみたい。
お母さんはそんな状況を目にして、泣いてしまったのよ。

そこまでして、実家と縁を切りたい理由がわからないと嘆いていて、そんな事を息子が望むはずもない、嫁にあわせて、孫にも会わせないとか悲しすぎるって。」

「今まで、我慢していたお母さんも、孫の存在まで隠そうとした息子に対して怒っていた。何でもかんでもお嫁さんの言いなりになって、息子が本当に幸せとは思えないって。
子どもが生まれたよって私たちに言いたかったはずだと思うけど、奥さんに止められて何もかも自分で背負う事になってしまった。」

その後、亜紀の実家からミキさんの実家へ連絡が行き、孫が生まれていた事が伝わった。
ミキさんのそれまでの行動も伝えられた。